トランスセオレティカル・モデル(TTM)は、ProchaskaとDiClementeによって提唱された行動変容モデルです。
元々は禁煙指導などの分野で発展しました。最大の特徴は、
対象者を「やる気のある人」と「ない人」に二分するのではなく、
変化に対する「準備性(レディネス)」を段階的(ステージ)に捉える点です。
従来の指導が「準備ができている人」向けだったのに対し、
TTMをゆるやかに適用すれば、「まだその気がない子ども」から
「頑張っているけれど挫折しそうな子ども」まで、それぞれのステージの
子どもに合わせた支援に繋げられます。
TTMは以下の4つの柱で構成されています。
① 変容ステージ【「早寝早起き」心の現在地】:今、どの段階にいるか
② 自己効力感【「早寝早起き」自信度】:できそうだと思う自信
③ 意思決定バランス【「早寝早起き」心の天秤】:メリットデメリットの天秤
④ 変容プロセス【ステージを進めるための具体的な方法】
私は、これまでの研究で、TTMの理論を小・中学生の睡眠教育に活用するために、
以下の3つを調べるアンケート調査票を作成し、科学的に検証を行いました。
①早寝早起きの変容ステージ【「早寝早起き」心の現在地】
②早寝早起きの自己効力感【「早寝早起き」自信度】
③早寝早起きの意思決定バランス【「早寝早起き」心の天秤】
その結果、小学校5・6年生用と中学生用の質問項目が確立され、このアンケート調査票が
科学的に信頼できるものであることが確認されました。
TTMの柱の説明に合わせて、教育現場で活用できる①~③のアンケート調査票についても紹介します。
TTMの理論では、人は行動を変える時、以下の5つの階段(ステージ)を上っていきます。
各ステージの状態を示した上で、子ども向けのステージの名称を提案します。
なお、「変容ステージ」は、子ども向けには「心の現在地」と表現すると伝わりやすいと考えています。
(1)前熟考ステージ(無関心期)
<状態>
近い将来(大人は6ヶ月以内)に行動を変えるつもりがない。「寝不足でも平気だし」「何が悪いの?」
「寝る時間があればゲームがしたい」などの気持ちがあり、必要性を認識していません。
<子ども向けのステージ名>
まだいいやステージ
(2)熟考ステージ(関心期)
<状態>
近い将来(大人は6ヶ月以内)に変えようと思っているが、まだ踏み出せない。
「早く寝たほうがいいのはわかるけど、ゲームもしたいし…」と、
メリットとデメリットの間で心が揺れ動いている不安定な時期です。
<子ども向けのステージ名>
迷い中ステージ
(3)準備ステージ(準備期)
<状態>
直近(大人は1ヶ月以内)に行動を起こすつもりがある、あるいは少しずつ始めている。
小・中学生は、時々実施している状態。「来週からやってみようかな」「昨日は早く寝てみた」など、
具体的な方法(How to)を探し始めています。
<子ども向けのステージ名>
やる気ステージ
(4)実行ステージ(実行期)
<状態>
行動を変えてまだ日が浅い(大人は6ヶ月未満、小・中学生は2ヶ月未満)。
一生懸命取り組んでいますが、まだ習慣化しておらず、少しのきっかけ(テスト期間や連休など)で
元の生活に戻ってしまうリスクが高い時期です。
<子ども向けのステージ名>
チャレンジステージ
(5)維持ステージ(維持期)
<状態>
行動が続いている(大人は6ヶ月以上、小・中学生は2ヶ月以上)。「早く寝ないと調子が悪い」と
感じるほど習慣化していますが、依然として誘惑による逆戻りのリスクはゼロではありません。
<子ども向けのステージ名>
習慣ステージ
(6)まとめ
重要なのは、これらのステージは一方通行ではなく、「行ったり来たりする」ということです。
一度は維持(習慣)ステージに行っても、夏休み明けに熟考(迷い中)ステージに戻ってしまうこともあります。
しかし、一度上った経験があれば、次はよりスムーズに再開できる可能性が高まります。
変容ステージは、『「早寝早起き」心の現在地 フローチャート』で確認できます。
フローチャートの正式名称は、早寝早起きの変容ステージ(大曽ら,2021)です。
「早寝早起き」の自信度は、「誘惑があっても、自分は早く寝ることができる」という自信のことです。
この自信(自己効力感)は、ステージが進むにつれて高まっていきます。
初期の段階では自信(自己効力感)がなくて当たり前なので、
小さな成功体験を積むことが重要になります。自信(自己効力感)は、実際の早寝早起きの状況を予測します。
自信(自己効力感)は、以下の『「早寝早起き」自信度チェックシート』で確認できます。
チェックシートの正式名称は、早寝早起きの自己効力感尺度(大曽,2020)です。
【見方のポイント】
自信(自己効力感)については、解釈がやや複雑ですので、見方のポイントを示します。
・合計点が高いほど、誘惑や障害があっても早寝早起きを実行・継続
できる「自信(自己効力感)」が高い状態です。
・点数が低い項目は、その子どもが「つまずきやすいポイント」です。
そこをどう乗り越えるか(例:宿題は朝やる、休みの前日も睡眠習慣を変えない等)を
一緒に話し合う材料にできると理想的です。
「早寝早起き」心の天秤(メリットとデメリット)は、行動を変えること(ここでは早寝早起きをすること)の
「メリット(利益)」と「デメリット(負担)」のバランスです。
(1)前熟考(まだいいや)ステージ・熟考(迷い中)ステージ
「早く寝るとゲームができない(負担)」 > 「健康になる(利益)」
(2)準備(やる気)ステージ
「負担」 ≒ 「利益」(少しずつ迷いが晴れる方向に向きはじめる)
(3)実行(チャレンジ)ステージ・維持(習慣)ステージ
「健康になる・朝スッキリする(利益)」 > 「ゲームができない(負担)」
ステージを前に進めるためには、この天秤を「メリット」側に傾けるような働きかけが必要です。
意思決定バランスは、以下の『「早寝早起き」心の天秤(メリットとデメリット)チェックシート』で確認できます。
チェックシートの正式名称は、「早寝早起きの意思決定バランス尺度(大曽ら,2021)」です。
【見方のポイント】
心の天秤(意思決定バランス)についても、解釈がやや複雑ですので、見方のポイントを示します。
・問1〜6(メリット・利益)の合計点 と 問7〜12(デメリット・負担感)の合計点を算出します。
・メリットの点数 > デメリットの点数 であれば、行動を変える準備が
できている可能性が高まります。
・メリットの点数 < デメリットの点数 の場合、無理に行動させようと
せず、授業や対話を通じて「メリット」の点数を上げていく(知識や
気づきを与える)アプローチが有効です。
・質問項目のうち、どの項目にメリット(利益)を感じているのか、ど
の項目にデメリット(負担)を感じているのか、子ども自身に考える
機会を提供します。

このファイルには、以下の内容が含まれます。現在、準備中です。
1.睡眠に対するモチベーション・行動を把握するための調査票
2.睡眠に対するモチベーション・行動を入力するためのエクセルファイル
3.エクセルファイルの使用方法
生活習慣チェックシート(中学生用)です。現在の自身の生活習慣を見直し、目標を立てる時に使用します。1週間、継続的にチェックを行うためのチェック欄、保護者のコメント欄、学校の先生のチェック欄が設けられています。

生活習慣チェックシート(小学校高学年用)です。現在の自身の生活習慣を見直し、目標を立てる時に使用します。1週間、継続的にチェックを行うためのチェック欄、保護者のコメント欄、学校の先生のチェック欄が設けられています。

睡眠教育プログラム(中学生用)のパワーポイント資料です。
科学的根拠に基づいて内容が構成されています。
中学校での教科の授業、保健指導、学校保健委員会などで必要な資料をピックアップして
確保できる時間に合わせてご使用いただけたらと思います。
参考になるように、授業者が話す内容をノート欄に記載しています。
商用利用は不可です。

睡眠教育プログラム(小学校高学年用)のパワーポイント資料です。
科学的根拠に基づいて内容が構成されています。
小学校での教科の授業、保健指導、学校保健委員会などで必要な資料をピックアップして
確保できる時間に合わせてご使用いただけたらと思います。
参考になるように、授業者が話す内容をノート欄に記載しています。
商用利用は不可です。

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